

院長インタビュー

大正ファミリー歯科
院長:
松岡 永治
先生
私たちが目指しているのは、患者さまのお口の健康を長期的に維持し、豊かな人生を送っていただくことです。そのためにも、できるだけ歯を削らず、なるべくご自身の歯を残すことが大切だと考えております。
当院は高齢者の方のみならず、障がいをお持ちの方や医療的ケア児、そして精神疾患を抱える方々への訪問歯科診療に力を入れています。
障がいをお持ちの方などへの歯科医療の必要性をもっと社会に訴えていきたいという思いがあるからです。そして社会的な価値を高めることで、結果として必要な医療に適切な評価が生まれると考えています。
訪問診療では、歯科衛生士だけを派遣することはありません。必ず歯科医師と歯科衛生士が一緒に訪問する体制を徹底しています。
施設への訪問でも同様です。歯科医療の重要性を施設側にも理解していただきながら連携を深めることで、利用者様だけでなく施設全体の口腔ケアの質も向上していくと考えています。
訪問件数を増やすことだけを目的にするのではなく、質の高い歯科医療を提供することを優先しています。そのため、「衛生士だけ来てもらえればよい」という考え方の施設とは、場合によってはお付き合いを見直すこともあります。
もともと私は、地域医療に携わりながら、目の前の人たちを直接支えられる仕事がしたいという思いを持っていました。
その中で強く感じているのは、「障がい者」という言葉が特別なものとして扱われなくなる社会を目指したいということです。
よく「ユニバーサルデザイン」という言葉が使われますが、本来は特別な配慮として語られるのではなく、それが当たり前の社会であるべきだと思っています。人それぞれ違いがあるのは当然であり、多様な人がいてこそ社会は成り立っています。同じ人ばかりでは社会とは言えません。
こうした考え方は、同じ地域で開業していた同級生とも語り合っていました。そしてお互いの理念が重なっていることを再確認したのです。
理想や理念だけでは継続的な医療は成り立ちません。だからこそ、社会的な意義と経済性の両立について常に考え続けています。
現在は先ほど述べた同級生と一緒に診療領域を分けており、私は外来診療を担当し、彼は訪問診療を担当しています。それぞれが専門性を持ちながらも対等な立場で医院運営に携わっています。根本にある理念が同じなので大きな衝突になることはありません。意見が違うことはあっても、目指している方向が一致しているため、お互いを尊重しながら進むことができています。
私たちが大切にしているのは、歯科医療を通じて誰もが当たり前に必要な医療を受けられる社会をつくることです。その実現に向けて、これからも取り組みを続けていきたいと思っています。
歯科医療は生命に直接関わる場面は決して多くありません。しかし、患者様の生活の質(QOL)に大きく関わる医療だと言われています。
欠損補綴には、インプラント・ブリッジ・入れ歯という選択肢がありますが、いずれも「食べること」を支え、食を通して生活の質を向上させることが目的です。
その中で、入れ歯は着脱が必要であることや異物感があることから、これまでインプラントやブリッジと比べて、ややネガティブに捉えられることが多かったと思います。そのため、近年はインプラント治療が広く普及し、ブリッジもさまざまな治療法が開発されてきました。
これまでは、「しっかり噛めるようになり、人生を全うすること」が治療の大きな目的でした。しかし、今は時代が変わっています。
平均寿命は延び、健康寿命も延びていますが、その差は依然としてあります。さらに、多くの方がさまざまな疾患を抱えながら生活する時代になりました。
かつては医科も歯科も「治すこと」が医療の中心でした。しかし現在は、完全に治すことが難しい病気と付き合いながら生活していく方が増えています。その中で医療に求められているのは、「治す医療」から「支える医療」(CareからCure)への転換ではないでしょうか。
私は、その方が病気を抱えながらも、自分らしく生活し、人生を最後まで豊かに送れるよう支えていくことが、これからの医療の役割だと考えています。近年よく耳にする「ウェルビーイング」という言葉がありますが、まさに持続的に生活の質を高めていくことが重要なのだと思います。
そう考えると、欠損補綴の価値も変わってきます。
私は、ある段階になると、インプラント・ブリッジ・入れ歯という3つの治療法の価値は逆転すると考えています。
例えば、入れ歯の「違和感」は設計やデザインによって大きく改善できます。また、「取り外さなければならない」という点も、高齢期には大きなメリットになります。
インプラントは外科手術が必要であり、全身状態によっては適応できない患者様も少なくありません。一方、入れ歯は全身状態に左右されにくく、多くの患者様に対応できます。
さらに、自分で着脱できることはもちろん、ご家族や介護者が取り外して口腔ケアを行えることも大きな利点です。介護が必要になる時期ほど、このメリットは非常に大きくなります。
特にコンティースのような義歯は、舌側の違和感を抑えた設計で着脱もしやすく、長期間使用しやすいという特徴があります。適切なメンテナンスを続けることで、患者様の生活を長く支えることができる治療法だと考えています。
私は、シニア世代以降の患者様にとっては、入れ歯が第一選択になる時代が来るのではないかと思っています。
さらに重要なのは、認知症との関係です。
認知症がある程度進行すると、どれほど精密な入れ歯を製作しても、新しい義歯を受け入れることが難しくなるケースがあります。
だからこそ、痛みが出たから、壊れたから作るのではなく、患者様の生活全体を見据え、「今が生涯使う入れ歯を作るタイミングではないか」と考えることが必要です。
その判断は歯科医師だけではなく、ご家族や介護職、医療職とも共有していかなければなりません。
「困ってから作る」のでは遅いこともあります。
患者様にとって最後のチャンスを逃さないために、そのタイミングを伝えていくことも、私たち歯科医師の大切な役割だと思っています。
忘れられない患者様がいらっしゃいます。
軽度の脳血管障害を患い、麻痺が残ったことで、それまで活動的だった方が自信を失ってしまいました。「もう治らない」と気持ちが沈み、通院もしなくなり、お口の状態も悪化していきました。
食事も楽しめなくなり、口臭も強くなってしまったことで、お孫さんから「おじいちゃん、お口が臭い」と言われ、喧嘩になってしまうこともあったそうです。その結果、ますます人と関わることを避けるようになってしまいました。
そんな様子を心配したご家族が、久しぶりに医院へ連れて来てくださいました。
私は時間をかけてお話をし、「一度だけでも入れ歯を作ってみませんか」とご提案しました。
最初は戸惑われていましたが、少しずつ入れ歯に慣れ、食事ができるようになり、ご自身で口腔内もきれいに管理されるようになりました。
すると口臭も改善し、表情も明るくなり、食事も楽しめるようになりました。
その後、お孫さんと笑顔で写った写真を持ってきてくださり、「先生のおかげで毎日が楽しいです」と言っていただいた時は、本当にうれしかったですね。
その患者様は後にお亡くなりになりましたが、ご家族が入れ歯を持って来られ、「本人がとても大切に使っていたので、一緒に納めてもいいでしょうか」とご相談くださいました。
私は「ぜひ一緒に納めてあげてください」とお伝えし、お見送りをさせていただきました。
入れ歯は単に噛めるようになるためのものではなく、その方らしい人生や、ご家族との時間を支えるものなのだと、改めて感じた出来事でした。
私たちの役割は、患者様が納得して選択できる環境をつくることだと考えています。
治療をするかしないかも含めて、あらゆる選択肢をご説明し、それぞれのメリットとデメリットをきちんとお伝えすることが大切です。
「これが絶対に正しい治療です」というものはありません。
患者様の価値観や人生観によって、最適な治療は変わります。
だからこそ、責任を持って説明し、患者様ご自身が主体的に判断できるようお手伝いすることが、私たちの仕事だと思っています。
迷われた時には、私たちの考えをお伝えすることもありますが、セカンドオピニオンを受けることも積極的におすすめしています。
患者様が十分に理解し、納得した上で選択していただくことが何より大切だと考えています。
「もう遅い」「どうせ良くならない」と諦めず、ぜひ一度ご相談ください。
きっと今より良い方法が見つかると思います。一緒に考えていきましょう。
ただし、私は入れ歯を「リハビリテーションの道具」だと考えています。
義足を装着した方が、最初から自然に歩けるわけではありません。努力を重ね、リハビリを続けることで日常生活を取り戻し、中にはパラスポーツで世界を目指す方もいらっしゃいます。
入れ歯も同じです。
患者様にも努力は必要ですが、その積み重ねによって、今よりも快適に食べられ、より豊かな生活につながっていきます。
皆さんが特別な結果を目指す必要はありません。
今より少しでも良くなることを目標に、私たちと一緒に歩んでいきましょう。

私たち大正ファミリー歯科は、地域に根ざした歯科医療を実践しています。1人でも多くの方に、生涯お口の健康を維持し健やかに暮らしていただきたい。そのため必要な治療を行なったうえで、痛くなく快適な口腔ケアをお勧めしています。「食べる事は生きる事。」です。悪くならない為にこそ、歯科医院にお越しください。
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